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医療従事者の声

「在宅医療だからこそ、外出の機会をつくってあげることが大切だと思います」

親子はねやすめの活動は、医療従事者の皆さまにも支えられています。医療法人財団はるたか会は、東京、千葉、仙台、静岡に小児在宅医療を担う診療所を開設しており、600名以上のお子さんの訪問診療を行っています。レスパイト旅行に同行いただくなど、普段よりお世話になっているはるたか会の医師・石渡久子さんにお話をうかがいました。


医療法人財団はるたか会
子ども在宅クリニックあおぞら診療所墨田
医師 石渡久子さん

この道を選んだのは、子どもは自宅にいた方が自然で楽しそうだから

私はもともと小児科医を目指していたのですが、学生時代の実習であおぞら診療所に行く機会があり、そこでお子さんの訪問診療に大変興味を持ちました。その後、小児科医としての経験を積み、医者になって10年目にあおぞら診療所で働く機会を得ました。

なぜそれほど在宅医療に関心を持ったのかというと、重い病気や障がいを持ちながら自宅で過ごすお子さんに初めて接したからだと思います。自宅で日常生活を送る子どもたちはとても自然でニコニコ楽しそうで、実に子どもらしく過ごしていました。「自宅では子どもは子どもの顔をしている。病院で見せる顔はほんの一部だ」ということに気づき、在宅医療のほうが自分に合っていると思うようになりました。

この活動に参加して初めて知った、旅行することの大変さと喜び

親子はねやすめの活動に参加したのは、あおぞら診療所勤務1年目のときでした。それまでレスパイト旅行の存在そのものも知りませんでしたし、病気や障がいがあり、医療的ケアが必要なお子さんやその家族が旅行することは大変という発想もありませんでした。ですが、実際に参加してみると「旅行って大変なんだ!でも、こんなに喜んでもらえるんだ!」と実感し大変興味を持ちました。

レスパイト旅行中は、おもに看護師やリハビリスタッフが家族に代わって子どもたちのケアを行う場面が多く、それほど医師の出番はありません。ただし、何か起きたときには医師として責任を取るという思いで付き添っているので、その点ではご家族にも安心して参加してもらえているのかなと思っています。一方で、医療職スタッフにとっては「子どもたちは毎日こうやって暮らしているんだ」といった学びを得られることや、事務職スタッフにとっては普段の仕事の意義を再確認できる機会になっていることはとてもよいことだと思っています。

旅行には、やりたかったことをやりたくなる不思議な力がある

新しいことが苦手という子どもたちにとっては、レスパイト旅行は新しいことに挑戦するよい機会になっていると思います。自宅で医師や看護師に言われても決してやらないようなことを、ボランティアスタッフなどいろいろな人たちがいる環境ではやってみようとするんですね。また、普段はお父さんやお母さんに頼りきりの子どもたちが両親には頼らずに行動しようとしたりもするんです。それが結果的に本人たちの自信になったり、成長したりする機会になっています。旅行には不思議な力があると思いますね。

医療的ケアを必要とするお子さんのしたいこと、きょうだい児のしたいこと、お父さん、お母さんのしたいこと、どれも大切にできるのがこのレスパイト旅行のよさだと思います。家族のやりたいことをボランティアや医療スタッフのサポートによって実現させてあげられるのがいいですね。

旅行をきっかけに次の一歩を踏み出してほしい

医療的ケアを必要とするお子さんとそのご家族には、レスパイト旅行をきっかけに「意外と旅行も行けるかもしれない。今度は家族だけで行ってみよう」と思ってもらえるといいですね。なかなか初めの一歩を踏み出せないご家族は多いので、一度参加することで、移動手段や持ち物、どんな工夫があるとよいのかといったことを知ってもらい、次の一歩を踏み出すきっかけにしてもらえたらと思います。実際に、「この前、家族だけで旅行したんですよ!」というお話を聞くこともよくあります。お父さん、お母さんも、親子はねやすめのレスパイト旅行で自信を持つようです。

とは言っても、レスパイト旅行に行けるご家庭はまだごく一握りで、こういったサポートは全然足りていません。いつも自宅でケアをしているからこそ、自宅から出る機会を持つことが大切だと思うんです。なので、医師としては出かけられるくらいの体調に整えてあげることも必要だと考えています。そして、もっと支援者が増えることも大事です。親子はねやすめは、ご家族だけでなく、医療従事者にとってもありがたい存在です。これからもできることをやっていきたいですし、もっとできることがあるのではないかと試行錯誤しながら関わっていきたいと思っています。